« 耳の不自由な人間は落語を聞いちゃいけないのか? | メイン | ミャンマーの軍政にパンティーを »

2007年11月02日

●好きなものを食べられるのは幸せなこと

 『毎日新聞』(10月31日付)の投稿「大食いのテレビ見て飢餓を思う」を読んで思う。
 投稿者は、82歳の女性である。彼女は、こういう。

 あられもなく大きな口を開けて、さも得意げに大量の高級食品をパクパクと食べているお嬢さん。いったいどのような学校・家庭教育を受けたのか考えさせられます。
 同じ年頃のころ、私たちはちょうど戦中、戦後で極めて厳しい日々を過ごしました。今、地球上では飢えている可哀そうな子供たちも大勢います。大食いの光景をテレビで見ると気分が悪くなります。

 この表現からすると、非難されているのは、ほぼ間違いなくギャル曽根こと曽根菜津子さんであろう。
 さて、以前、僕も曽根さんの大食いについては、ブログで書いた
 そもそも、僕は、この投稿者と同じような考えを持っていたし、今も持っている。母親からそう教わったからだ。お茶碗に、ご飯が一粒でもついていようものなら、「残さず食べなさい」と怒られた。「一粒の米には、8人の神さんがいる」とか「お百姓さんが一生懸命につくったものだから」「もったいない」といわれた。そのおかげで、今でも出されたものは、残さずに食べるくせがついている。カウンターしかないような赤提灯で、魚の煮物などを食べると、女将さんが皿を下げるときに「まあ、猫もびっくりやね」とうれしげにいわれることもあるくらい、残すのは嫌いである。
 したがって、曽根さんの名前は、ずいぶん前から聞いてはいたが、彼女がでている番組など、見ようとも思わなかったし見なかった。が、以前の記事にも書いたように、一度見てすっかりとファンになってしまった。
 その理由は、繰り返しになるが、その食べっぷりにある。
 かつての僕と、この投稿者は、大きな勘違いををしていると思うのだ。つまり、世界には飢えて死ぬ子どもも多い。そして、国内においても、餓死者は増加の一途をたどっている。しかし、問題は、大食いにあるのではけっしてない。問題は、あまりにも多くのものが捨てられているという点にある。
 さらに、曽根さんの食べっぷりに魅せられるファンが多いことは、彼女のブログを見ても分かるが、なぜ、人は彼女の食べっぷりに魅せられるのか。それは、食べるという行為が人の本能であり、本当に幸せそうに食べる彼女を見て、自分も擬似的に幸福感を味わっているのだと思うのである。
 投稿者は、自分の若い頃は食べられずに……という。僕の母親も、戦中・戦後は本当に食べ物には苦労したといっていた。だから、僕たち子供には、本当においしいものを食べさせてくれたし、しかし残すことは許さなかった。好きなものを腹一杯に食べることができる幸せは代え難いものである。
 僕は、曽根さんの食べっぷりを見ていて思うのは、食べることのできる幸せを彼女が本当に体現できている点にあると思うのである。食べることができない人がいるから大食いがいけないのではなく、むしろ食べることができない人がいるから、食べることのできる彼女は人を魅了するのではないかと思うのである。
 一度、投稿者を含め、曽根さんの食べっぷりに違和感を覚える人は、若い人がよく行くような居酒屋などに行ってみるといい。どれほど多くの若い人たちが、たくさんの食べ物を残しているか。僕の母や投稿者が若い頃に比べると、日本は確かに豊かになっている。だからこそ、多くの若い人たちは、外食に出かけては、食べたいものをたくさん注文しては、食べきれずにたくさん残しているのである。この現実こそ、問題にすべきではないだろうか。
 僕も、妻も食べることは大好きなので、よく外食に出かけるが、そのたびに大量の食べ残しが下げられていくのを見て、「もったいないなあ」と愚痴をこぼす。それこそ、「食べられない人がいるのに」なのだ。
 外食だけではない。コンビニなどで賞味期限を過ぎたおにぎりやお弁当がどれだけ廃棄されているか。大阪の日雇い労働者の街・釜が崎にいけば、賞味期限切れと思われるコンビニの弁当が、路頭で150円やら200円で売られている。十分に食べられるのに、捨てられている。これが現実の社会である。テレビで映し出されている世界など、いわば「架空」のものであり、問題は現実に廃棄され、処分されている食品の多さ、そしてそうしたものを生み出す、僕たち、この投稿者も含め、消費者にある
 かつての僕がそうであったように、曽根さんを非難する人の気持ちはよく分かる。しかし、問題は、たくさん食べるということにあるのではなく、たくさん捨てるということにあるのではないだろうか。そして、前向きに考えると、自分の好きな食べ物を好きなだけ食べられるというのは、本当はとても幸せなことなのだと思うのである。

トラックバックURL

| この記事へのリンク

このエントリーのトラックバックURL:
http://redpepper.x0.com/mt-tb.cgi/473

コメントする

(TypeKey IDがなくてもコメントできます。しかし、初めてのコメントの時は、コメントが表示されるために承認が必要です。承認されるまでコメントは表示されませんので、もうしわけありませんが、しばらくお待ちください)