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2006年11月01日

●アメリカの教育バウチャー制度

 財団法人・自治体国際化協会のサイトで、アメリカのバウチャー制度について、簡潔で要点をえた解説があった。
 まず、アメリカでは「教育改革」の一環としてバウチャーが論議されたらしい。安倍氏が、いきなりバウチャー制度など言いだしたのは、ブッシュの物まねなんだろう。それはともかく、この「教育改革」の中身は以下のようになる。
 (1)連邦政府の補助金の使途について、州や各地区の裁量範囲を拡大する。
 (2)州政府に、3年生から8年生までの「読み書き」および「数学」の統一テストの実施を義務づける。
 (3)各学校にはテストの成績の目標が示され、基準に達しない学校には連邦政府から補助金が出されるが、それでも改善されない場合は、その学校の生徒は公費で別の公立学校に転校させることを認める。また、十分な改善が4年続けて見られない学校の教職員とカリキュラムを変更することを認める。
などである。(上記サイトより引用)
 さて、この(2)および(3)の問題は、深刻である。統一テストを実施し、子供の成績が基準に達しなければ、別の学校へ転校させ、またその教職員とカリキュラムを変更するという点である。
 マスコミでもときどき話題となる某巨大掲示板では、特定の都道府県や特定の地域を名指しで笑いものにしている場面に出くわすのだが、統一テストを実施し基準に満たない学校やあるいはそういう学校を含む地域が、蔑んだ目でみられネット上で差別的に取り上げられる危険性がたぶんにある。これは教育ではない。国家ぐるみの集団的ないじめだろう。
 そもそも、勉強はできたにこしたことはないと思うが、国が決めた基準に達しなければならない理由もない。僕の母親は戦中生まれで、字の読み書きは不自由であるが、立派に商売を営み、けっこうな生活をしている。要は、生きていく力をつけていくというのが教育なのではないのか。勉強だけできればいいのであれば、公立の塾でもつくればよい。
 さて、さらに安倍氏は著書『美しい国へ』の中で、アメリカのバウチャー制度に触れているが、広大な面積と3億の人口を有するアメリカでも、教育バウチャー制度を実施しているのは、わずか3地域にしかすぎない。しかも、先に紹介したサイトに詳細があるが、学校間の競争を促し教育の質を高めるために導入しているのではなく、教育費のねん出することができない家庭に、補助金としてバウチャーを発行しているのである。
 また、この記事では、バウチャー制度の問題として、1)政教分離の問題、2)コスト高の問題、3)成果の問題を挙げている。
 1)に関しては、宗教団体が学校を運営し、その学校に人気が集まり、バウチャーが大量に使われれば、特定の宗教団体への利益供与になるのではないかといく懸念である。まったくその通りだろう。
 2)の件では、僕は教育に対してはいくらコストをかけてもいいと思っている。むしろ、公立の小中高大学まで、無料もしくは無料に近いくらいの授業にすべきだと思っている。ただ、ここでいうコストとは、バウチャー制度をわざわざ導入したのはいいが、無駄なコストばかりかかるという可能性である。
 つまり、3)でいうように、成果に関しては、イギリスではすでに保守党サッチャー政権下でバウチャー制度が導入されているにもかかわらず、現労働党政権下では、導入した当の保守党からバウチャー制度の廃止を訴える声がでているというのだから、深刻である。
 では、こうした多くの問題を含む教育バウチャー制度を、今あえて安倍政権は出してきたのか。一つのカギは、過去の記事「教育を受ける権利は、誰もが有する」に書いたようなことがあるのではないかと考える。つまり、教育の民営化、公立の学校の撤廃を狙っているのではないかということだ。
 教育基本法改正の論議がふたたび国会でなされているが、安倍内閣はバウチャー制度もごったにして、どさくさまぎれに制度化する可能性がある。要監視事項のひとつだろう。

 ※関連エントリー
 「今週の『サンデー毎日』 教育バウチャー制度編」

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