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2006年10月19日

●いじめは人間の本質か

 仕事がら、なかなかテレビもみれないので、情報はもっぱらメールマガジンで仕入れるのだが、そのうちのひとつ『週刊メールジャーナル』(2006/10/18 No.356)で気になる記事があった。「いじめによる自殺報道は学校社会の本質を見ていない いじめのない学校なんてあるはずがない」という題で、このメルマガを編集発行している川崎氏の記事だ。
 この記事を、僕なりに要約すると、学校でのいじめというのは学校のみならず、人間の本能である。したがって、学校ではいじめはとうぜんのこととして、教師の研修などはじめ対処しなければならないというものである。
 僕は、観念論の立場をとらず唯物論の立場をとっているので、現実社会からすべての問題を考える。そうすると、学校でのいじめが現実に存在する以上、それをふまえて、教育現場は対応すべきだと思うし、実際にもそうしてきたのではないかと思う。
 が! いじめが「人間の本能であるから、当然いじめはある」というには、強い違和感がある。
 川崎氏は、野生動物を例にとり、
 「つまりは、自己の生存権のために、魚類や野獣が、自分の縄張りを守るために他者を追い出そうとたたかう本能と、ほとんど同じ行為なのである。」
 というが、こうした自然科学における「法則性」を、安易に社会科学に当てはめるのは、ナチスの方法に類似し、社会ダーウィニズムにも通じるきわめて危険な方法である。
 具体的にいうと、「魚類や野獣が、自分の縄張りを守るために他者を追い出」すというのは、誤りである。正確にいうと、都合のいいところだけを抜き出して、事実をねじ曲げている。最近はやりの言葉でたとえると、世界で最強最悪の物質「ジハイドロジェン・モノオキサイド」(和名:一酸化二水素)問題と同じく、嘘をつかなくても、ある事実を意図的に隠すことによって、見方が変えてしまうという効果をもたらす。
 さて、イワシが泳いでいる水族館にいけば、すぐにわかるが、小型の魚は自らの身を守るために群れをなす。けっして、仲間内で「縄張りを争う」などということはしない。あるいは、クジラの仲間でも複数のメスが群れをなし、子育てをする種がある。この場合などは、明らかに助け合って種を保存するという知的行動がみられる。
 哺乳類は、脳の発達から知的な行動をするケースが多数みられるが、太古の時代からヒトとともに生きてきたイヌもそうだろう。群れをなし、リーダーを先頭に助け合いかばいあいながら生きる。もちろん、次期リーダーを決める争いやメスをめぐる争いはおこるが、これはいじめとは次元が違う。
 では、この記事でいう「縄張りを争う」ことはないかというと、主に群れをなさない動物には確かにみられる。たとえば、ネコ科の動物など典型だろう。あるいは、魚類でいうとアユなども有名だ。
 しかし、縄張り争いをする動物がいるといっても、相手を殺すまでには至ることはない。ましてや、生物界において最も知能の発達した人間が、なぜ縄張り争いをして、相手を死に至らしめる必要があるのか。
 そもそも、川崎氏は、「本能」などという言葉を簡単にヒトに使っているが、ヒトほど本能から遠ざかった、あるいは本能という呪縛から解き放たれた生物はいないのではないかと考える。それは、高度に発達した知能だけがもたらすことである。
 つまり、いじめの発生と撲滅とは、この高度に発達した知能をもってすれば、かならず解決できるはずである。逆に、もし、川崎氏のいうように「縄張りを守ろうとする」ような本能がヒトに存在するなら、ヒトはもっと動物的であっただろう。つまり、ヒトの主な行動は他の動物と同様に、食欲という自己の保存と、性欲という種の保存のみに。もっとも、そうであったなら、いじめの問題はおろか、環境問題もエネルギー問題も、さらには同種が殺しあうという戦争の問題も存在しうるはずもなく、その方がよかったのかもしれないが。

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